円はどの局面で何%下落したか — 1997年より2022年のほうが大きい
月平均でみると、円の対ドル下落率は1997年の局面が26.6%、2022年の局面が28.2%です。5つの局面について下落幅・所要期間・回復までの月数を同一系列で比較し、ショック型から構造型へ性格が変わった過程を確認します。
円はどの局面で何%下落したか
最大は2022年の局面の28.2%で、1997年の局面の26.6%をわずかに上回ります。下表は円ドルの月平均レートを同一系列で用い、基準月から当該区間の月平均最高値までを計算したものです(BIS二国間レート)。
円はどの局面で何%下落したか
下落率
ゼロを基準とする共通の線形目盛です。 下の表から一部の項目を抜粋しています。日付・単位・定義・注意点は元の表と本文を確認してください。
| 局面 | 基準月 | 高値(月平均) | 下落率 | 所要期間 |
|---|---|---|---|---|
| 1997年アジア通貨危機 | 114.29(1997年6月) | 144.68(1998年8月) | +26.6% | 14か月 |
| 2008年金融危機 | 106.91(2008年6月) | 109.28(2008年8月) | +2.2% | 2か月 |
| 2020年コロナ | 109.33(2020年1月) | 110.07(2020年2月) | +0.7% | 1か月 |
| 2022年利上げ | 114.91(2022年1月) | 147.30(2022年10月) | +28.2% | 9か月 |
| 2024–2026年 | 143.24(2024年9月) | 162.51(2026年7月) | +13.5% | 22か月 |
アジア通貨危機は円にとって最大の下落局面ではありませんでした。より大きい下落は2022年に起きています。
すべて月平均の数値であり、日次終値や日中高値ではありません。後者は変動期には必ずより極端になります。基準月は市場間比較のため1997年6月に固定しており、各国の制度変更日とは一致しません。また本サイトの計算機が用いる為替系列は本表と出所が異なるため、小数点以下がわずかに食い違う場合があります。2つの系列を同じ表に混ぜないでください。
同じ幅でも、戻り方が違う
下落幅だけを見ると1997年と2022年はほぼ同じです。回復までの期間を並べると、性格の違いがはっきりします。
| 局面 | 下落率 | 回復までの期間 |
|---|---|---|
| 1997年アジア通貨危機 | +26.6% | 5か月 |
| 2008年金融危機 | +2.2% | 1か月 |
| 2020年コロナ | +0.7% | 1か月 |
| 2022年利上げ | +28.2% | 未回復 |
| 2024–2026年 | +13.5% | 未回復 |
回復までの期間は、高値の月から月平均が基準月の水準以下に初めて戻った月までを数えたものです。1998年8月の高値からは5か月、つまり1999年1月に1997年6月の114.29へ戻りました。2022年10月の高値からは、2026年8月時点でまだ2022年1月の114.91に戻っていません。
2024年9月から続く局面も未回復です。2026年8月の月平均は158.80で、この局面の起点である143.24を上回ったままです。
読者にとって重要なのは、同じ「30%近い下落」でも、数か月で戻る一時的な変動と、4年続く水準の変化とでは、輸入価格や海外旅行費用、外貨建て資産の評価に与える影響がまったく違うという点です。
1997年に下落したのは円だけだったか
いいえ。ただし市場ごとの差は非常に大きいものでした。下表は同じ方法で1997年6月から各通貨の高値までを測ったものです。
| 通貨 | 1997年6月からの下落率 | 所要期間 |
|---|---|---|
| インドネシア・ルピア | +467.4% | 13か月 |
| タイ・バーツ | +116.0% | 7か月 |
| マレーシア・リンギット | +75.2% | 7か月 |
| フィリピン・ペソ | +66.0% | 15か月 |
| 日本円 | +26.6% | 14か月 |
| 台湾ドル | +24.5% | 14か月 |
| 香港ドル | +0.4% | 30か月 |
円の下落幅はこの中では小さいほうでした。区域外の参照として、韓国ウォンは7か月で90.4%下落しています。香港ドルがほとんど動いていないのは、ドルペッグ制度が圧力を為替以外に向けるためです。
この比較で円が特異なのは、通貨危機の当事国ではなかったにもかかわらず、その後の局面で危機時を上回る下落を記録している点です。1997年の局面は域内の資本移動が主因でしたが、2022年以降の局面は各国中央銀行との政策金利差が主に議論されています。これは制度と政策環境に関する解釈であり、表の数値は月平均為替系列の観測値です。
この数値を読むときに確認すること
まず測定基準です。月平均、日次終値、日中高値は、同じ出来事に対して異なる答えを出します。このページは5つの局面を比較可能にするため、全体で月平均を使っています。
次に基準月です。基準月を変えれば下落率はすぐ変わります。本表は全市場で同一の基準月を用いているため市場間の比較が可能ですが、各国の制度変更の時点とは一致しません。
最後に、為替と購買力を分けて考えることです。円が28.2%下落したことは、国内の物価が28.2%上がったことを意味しません。為替はまず輸入品の価格を変え、消費者物価指数への転嫁は一部にとどまり、時間もかかります。
よくある質問
円が最も大きく下落したのはいつですか
月平均でみると2022年の局面です。2022年1月の114.91から2022年10月の147.30まで9か月で28.2%上昇しました。1997年6月から1998年8月までの26.6%をわずかに上回ります。ここでの数値は月全体の平均であり、日次終値や日中高値はこれより高くなります。
1997年と2022年では何が違うのですか
戻り方が違います。1998年8月の高値からは5か月で1997年6月の水準に戻りました。2022年10月の高値からは4年近く経っても2022年1月の114.91に戻っていません。下落幅は同程度でも、一時的なショックか継続的な水準変化かという点で性格が異なります。
2024年から続く局面はどう位置づけられますか
幅は小さく、期間は長い局面です。2024年9月の143.24から2026年7月の162.51まで22か月かけて13.5%上昇しました。2022年の9か月で28.2%と比べると、1か月あたりの動きは4分の1程度です。
なぜこのページの数値は報道と違うのですか
このページは5つの局面を同じ尺度で比べるため、表全体で単一の月平均系列を使っています。報道は日次終値や日中高値を引用することが多く、変動期にはより極端な数値になります。