長短金利差(10年−2年)とは? 日本は112bpで平均超え、逆転はバブル末期だけ
長短金利差は10年国債利回りから2年国債利回りを引いた差です。2026年9月の日本は112ベーシスポイントで1986年以降の平均84.5を上回ります。逆転は1989〜1991年のバブル末期だけで、その後に1990年代の景気後退が来ました。
「逆イールドは景気後退のサイン」とよく言われます。では日本でその信号は当たってきたのでしょうか。財務省の国債金利から40年分の長短金利差を作り、景気の山・谷と並べました。
長短金利差(10年−2年)とは何か
10年国債利回りから2年国債利回りを引いた差です。ふつうは長い期間ほど金利が高く、差はプラスになります。差がマイナスになる状態を逆イールド(長短金利の逆転)と呼びます。
長短金利差(10年−2年)とは何か
- 10年国債利回り
- 値
- 2.992%
- 2年国債利回り
- 値
- 1.872%
- 長短金利差(10年−2年)
- 値
- 112.0ベーシスポイント
- 政策金利
- 値
- 1.25%
下の表から一部の項目を抜粋しています。日付・単位・定義・注意点は元の表と本文を確認してください。
| 項目(2026年9月、月平均) | 値 |
|---|---|
| 10年国債利回り | 2.992% |
| 2年国債利回り | 1.872% |
| 長短金利差(10年−2年) | 112.0ベーシスポイント |
| 政策金利 | 1.25% |
どちらも財務省の国債金利の日次値を月平均した値です。米国では10年−2年、韓国では10年−3年がよく使われるなど、短い方の年限は国によって違います。
いまの112bpは高いのか低いのか
平均より高く、「傾きが急」な状態です。
2026年9月の日本の長短金利差(10年−2年、月平均)。1986年7月以降の平均は84.5、中央値は86.2
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 最大 | 256.2bp(1995年11月) |
| 最小 | −60.1bp(1990年3月) |
| 2025年9月 | 73.8bp |
| 2025年12月 | 89.8bp |
| 2026年4月 | 104.0bp |
| 2026年7月 | 132.2bp(直近のピーク) |
| 2026年9月 | 112.0bp |
2026年前半は10年物が2年物より速く上がり、差は7月に132.2ベーシスポイントまで広がりました。8月以降は2年物の上昇が追いつき、差は縮んでいます。9月18日の利上げをはさんで、短い年限の金利が動いたためです。
逆転と平坦化のあと、景気はどうなったか
逆転したのはバブル末期の一度だけで、その後に景気後退が来ました。ただ、その後の平坦化は当たりと外れが混じります。
| 期間(20bp未満が3か月以上) | 最小値 | その後の景気 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 1989年5月〜1991年9月(うち逆転は1989年7月、1989年9月〜1991年8月) | −60.1bp | 1991年2月が景気の山、1993年10月の谷まで32か月の後退 | 当たり |
| 2016年3月〜9月 | 7.7bp | 次の景気の山は2018年10月。2016年4〜6月期は前期比−0.31% | 外れ |
| 2018年12月〜2020年2月 | 4.7bp | 景気後退期(2018年10月〜2020年5月)と重なる。2019年10〜12月期−2.88%、2020年4〜6月期−7.20% | 重なったが原因は別 |
| 2020年4月〜2021年1月 | 15.2bp | 2021年7〜9月期−0.19%、2022年1〜3月期−0.44%と浅いマイナス | 判定しにくい |
景気の山と谷は内閣府の景気基準日付、四半期の成長率はFRED(JPNRGDPEXP)の実質GDPから前期比を計算しました。このGDP系列は1994年からのため、1990年代初めの後退は景気基準日付で確認しています。
バブル末期の逆転は、日本銀行の利上げで短期金利が急上昇した結果でした。景気後退が始まると利下げが進み、1995年11月には差が256.2ベーシスポイントと最大になります。逆転から急な傾きへの反転が、1990年代の日本の金利の形です。
2016年以降は事情が違います。日本銀行は2016年1月にマイナス金利の導入を決め、同年9月からは10年物をゼロ%程度に誘導する長短金利操作を始めました(2024年3月に終了)。この間の平坦化は、景気見通しではなく政策で長期金利が抑えられた結果です。2019年10〜12月期は消費税率引き上げ、2020年4〜6月期は新型コロナの影響で、長短金利差が予告したとは言えません。
資産の伸びを複数の基準で比べる — 金利が上がる局面では、預金・債券・株式の伸び方が変わります。自分の資産の伸びを物価やマネーの伸びと比べられます。
米国の26か月逆転は何を教えるか
逆転しても景気後退にならないことがある、という点です。FRED(T10Y2Y)の月平均で見ると、米国の10年−2年は2022年7月から2024年8月まで26か月マイナスで、1976年以降で最長でした。それでも景気後退は起きていません。
日本のバブル末期の逆転は当たりましたが、標本は一度だけです。一度の的中から「逆転すれば後退する」と一般化するのは難しく、平坦化の局面はさらに外れが目立ちます。
2年物と政策金利の差は何を語るか
9月平均の2年物1.872%は、政策金利1.25%を62ベーシスポイント上回っています。2年物にはその間の政策金利の見通しが反映されるため、市場が追加利上げを見込んでいる可能性を示す差です。日次では9月28日に1.981%と、1995年以来の高さを付けました。
日本銀行は9月18日の公表文で、基調的な物価上昇率が2%の目標を上回る方向に振れるリスクを挙げています。次の金融政策決定会合は10月29日〜30日です。ただし62ベーシスポイントのすべてが利上げ予想というわけではなく、期間プレミアムや需給も含まれます。
この数字の限界
長短金利差は財務省の日次国債金利をCapsWindowが月平均して計算したもので、月末値を使うと値が変わります。2016年から2024年3月までは日本銀行がマイナス金利と長短金利操作で金利を抑えており、この期間の差を景気の信号として他の期間と同列に比べることはできません。逆転の事例は1989〜1991年の一度だけで、相関や的中率を語るには標本が少なすぎます。GDPの前期比はFREDの系列から計算した値で、内閣府の最新公表値と異なる場合があります。
よくある質問
長短金利差とは何ですか。
長い期間の金利から短い期間の金利を引いた差です。この記事では財務省が公表する10年国債と2年国債の金利を月平均し、10年から2年を引いています。2026年9月は2.992%−1.872%で112ベーシスポイントでした。
日本で長短金利が逆転したことはありますか。
1986年7月以降では、1989年7月と1989年9月〜1991年8月の計25か月だけです。最も深かったのは1990年3月の−60.1ベーシスポイントで、1991年2月を山とする景気後退(1993年10月まで)が続きました。
逆転すれば必ず景気後退になりますか。
そうとは言えません。米国は2022年7月から2024年8月まで26か月逆転しましたが、景気後退にはなりませんでした。日本でも2016年以降の平坦化は日銀の政策で長期金利が抑えられた結果で、そのまま景気の信号とは読めません。
2年国債利回りが政策金利より高いのはなぜですか。
2年物には今後2年間の政策金利の見通しが反映されるためです。9月平均の1.872%は政策金利1.25%を62ベーシスポイント上回っており、追加利上げを見込む動きと読めますが、期間プレミアムなど他の要因も含まれます。