実質GDIとは? GDPとの違いと交易損失、2026年4〜6月期は実質GDI0.6%でGDP0.9%を下回った
2026年4〜6月期の実質GDPは前年同期比0.9%増、所得側の実質GDIは0.6%増でした。GDIがGDPを下回ったのは2023年1〜3月期以来です。原油高で輸入物価が輸出物価より大きく上がり、交易損失が年率8.5兆円に拡大しました。GDPとGDIの違い、交易利得・交易損失の大きさ、韓国との比較、賃金と企業収益の動きを内閣府の速報で整理します。
GDPが増えているのに暮らし向きが良くなった気がしない。その理由のひとつは、国内で生産した量(GDP)と、その生産で得た所得で実際に買えるもの(GDI)の違いにあります。原油高が続いた2026年、日本ではこの2つの差が再び開き始めました。
GDPとGDIは何が違うのか
実質GDPは「どれだけ作ったか」、実質GDIは「作ったもので得た所得で、どれだけ買えるか」です。内閣府の国民経済計算では、実質GDI(国内総所得)= 実質GDP + 交易利得で、輸出物価に比べて輸入物価が上がると交易利得はマイナス(交易損失)になります。さらに海外からの所得(配当や利子など)の純受取を足したものが実質GNI(国民総所得)です。
簡単な例で考えます。ある国が自動車1台を輸出して原油100バレルを輸入していたとします。翌年、自動車の輸出価格が10%上がり、原油の価格が25%上がると、自動車1台で買える原油は約88バレルに減ります(100 × 1.10 ÷ 1.25、CapsWindow計算)。作った自動車の台数が同じでも、国全体が手にする購買力は減ります。この目減り分が交易損失です。
実際の物価で見ると、日銀の企業物価指数(2026年9月速報)で円ベースの輸出物価は前年比17.9%、輸入物価は24.5%上昇しました。同じ量の輸出で買える輸入の量は約5.3%減った計算です(1.179 ÷ 1.245 − 1、CapsWindow計算)。
日本の最新の数字は:GDIがGDPを下回った
2026年4〜6月期の実質GDIは前年同期比0.6%増で、実質GDPの0.9%増を下回りました。内閣府の2次速報(9月8日公表)の原系列による値です。GDIがGDPを下回ったのは2023年1〜3月期以来、13四半期ぶりです。
2026年4〜6月期の実質GDPと実質GDI(前年同期比、内閣府2次速報)。実質GNIは+0.1%でした。
日本の最新の数字は:GDIがGDPを下回った
実質GDP
ゼロを基準とする共通の線形目盛です。 下の表から一部の項目を抜粋しています。日付・単位・定義・注意点は元の表と本文を確認してください。
| 四半期 | 実質GDP | 実質GDI | 実質GNI | 民間最終消費支出 |
|---|---|---|---|---|
| 2025年1〜3月期 | 1.6% | 1.9% | 2.3% | 1.2% |
| 2025年4〜6月期 | 2.0% | 2.5% | 2.0% | 1.2% |
| 2025年7〜9月期 | 0.6% | 1.1% | 1.5% | 1.3% |
| 2025年10〜12月期 | 0.4% | 1.0% | 1.0% | 1.4% |
| 2026年1〜3月期 | 0.6% | 1.2% | 1.1% | 1.3% |
| 2026年4〜6月期 | 0.9% | 0.6% | 0.1% | 1.2% |
いずれも実質・原系列の前年同期比です(内閣府CSV)。2025年は輸入デフレーターが前年比で下落した四半期が続き、GDIがGDPを上回っていました。2026年4〜6月期にはその関係が逆転しました。季節調整済み前期比では、実質GDPが0.4%増(年率1.4%)だったのに対し、実質GNIは0.4%減(年率1.5%減)です(ポイント解説)。
7〜9月期の1次速報は11月16日に公表予定で、原油価格が9月まで高止まりした期間の数字はまだ出ていません。
交易損失はどれくらいか
実質の交易損失は、季節調整済み年率で2026年4〜6月期に8.50兆円でした。2025年10〜12月期の5.75兆円から3四半期で2.75兆円広がり、実質GDP(年率598.95兆円)の約1.4%に当たります(内閣府CSV、比率はCapsWindow計算)。
| 四半期 | 交易利得(実質・季節調整済み年率) | 輸出デフレーター(前年比) | 輸入デフレーター(前年比) |
|---|---|---|---|
| 2025年4〜6月期 | −6.84兆円 | −3.8% | −6.3% |
| 2025年7〜9月期 | −6.30兆円 | −0.3% | −2.9% |
| 2025年10〜12月期 | −5.75兆円 | 3.5% | −0.1% |
| 2026年1〜3月期 | −6.99兆円 | 7.1% | 3.3% |
| 2026年4〜6月期 | −8.50兆円 | 13.4% | 15.2% |
交易利得は2020暦年連鎖価格の実質値です。日本は原油・LNGなどを輸入に頼るため、交易利得は2020年以降の暦年ではすべてマイナスで、マイナス幅は2022年の17.6兆円が最大でした。2025年はマイナス幅が7.4兆円まで縮みましたが、2026年に入って再び広がりました。
前年同期と比べた変化で見ると、交易利得の変化は実質GDIの伸びを2025年10〜12月期に約0.6ポイント押し上げ、2026年4〜6月期は約0.3ポイント押し下げました(原系列、CapsWindow計算)。2026年9月までの企業物価では、輸出物価に対する輸入物価の相対的な上昇が4月から続いており(円ベースの比率の前年比は4〜6月平均で約−4.9%、7〜9月平均で約−6.2%、CapsWindow計算)、7〜9月期も交易損失が縮んだとは言えない状況です。ただし、これはモノだけの物価で、GDP統計の数値ではありません。
日銀も2026年4月の展望レポートで、原油価格上昇が「交易条件の悪化などを通じて企業収益や家計の実質所得に対する下押し要因」になると説明しています。
韓国・台湾と比べると日本はどちら側か
日本は「交易損失」の側、韓国は「交易利得」の側です。韓国銀行の統計(ECOS)では、韓国の2026年7〜9月期の実質GDPは前年同期比3.4%増、実質GDIは18.8%増で、1977年10〜12月期以来の高い伸びでした。交易条件の変化による実質貿易損益は、2025年7〜9月期の−10.9兆ウォンから2026年7〜9月期は+77.5兆ウォンに転じています(京郷新聞の報道)。
| 日本 | 韓国 | |
|---|---|---|
| 最新四半期 | 2026年4〜6月期 | 2026年7〜9月期 |
| 実質GDP(前年同期比) | 0.9% | 3.4% |
| 実質GDI(前年同期比) | 0.6% | 18.8% |
| 交易利得の向き | マイナス(年率−8.50兆円) | プラス(+77.5兆ウォン) |
基準四半期が1期ずれている点に注意してください。両国とも原油を輸入していますが、韓国は輸出に占める半導体の比率が高く、AI向けメモリーの価格上昇が原油高を大きく上回りました。台湾も半導体輸出が伸び、2026年4〜6月期のGDPは前年同期比12.93%増でした(Focus Taiwan)。台湾の交易条件変動損益と実質GNIの数値は本稿では確認できていません。
日本の輸出デフレーターも13.4%上がっていますが、輸入デフレーターの上昇がそれを上回りました。同じ「アジアの製造業国」でも、輸出品の値上がりが原油高を上回ったかどうかで、所得の向きが分かれています。
所得はどこへ行ったのか:賃金と企業収益
企業収益と賃金の伸びは、GDIの伸びよりも高くなっています。ただし、これらは名目値中心で、GDIとそのまま足し引きできる数字ではありません。
| 指標(2026年4〜6月期) | 前年同期比 | 出所 |
|---|---|---|
| 雇用者報酬(名目) | 5.3% | 内閣府 |
| 雇用者報酬(実質、家計最終消費支出デフレーター) | 2.6% | 内閣府 |
| 民間最終消費支出(実質) | 1.2% | 内閣府 |
| 経常利益(金融・保険を除く全産業) | 24.6% | 財務省 |
雇用者報酬は内閣府の速報、経常利益は財務省の法人企業統計です。経常利益は44兆6,668億円で、1954年以降289期で最大でした(製造業は前年同期比57.0%増)。名目の賃金が5%台伸びる一方、実質の個人消費は1%台前半にとどまっています。統計からは、輸出価格の上昇などで企業の名目収益が膨らんだ一方、輸入物価の上昇が家計の実質的な購買力を削っている姿が読み取れますが、交易損失が企業・家計・政府のどこにどれだけ配分されたかを四半期で示す公式統計はありません。
本稿の2026年4〜6月期の数値は内閣府の2次速報(2026年9月8日公表)で、7〜9月期1次速報(11月16日予定)や年次推計で改定されることがあります。交易利得は2020暦年連鎖価格の実質値で、季節調整済み系列は年率換算の金額です。前年同期比は原系列、前期比は季節調整系列で、両者は一致しません。企業物価は財のみでサービスを含まず、GDPデフレーターとは範囲が異なります。韓国の数値は2026年7〜9月期で、日本より1四半期新しい時点です。台湾の交易条件変動損益は確認できていません。本稿は投資の判断を勧めるものではありません。
よくある質問
GDPとGDIはどう違うのですか。
実質GDPは国内で生産したモノやサービスの量、実質GDIはその生産で得た所得が輸入品をどれだけ買えるかという購買力を表します。GDIはGDPに交易利得(交易損失のときはマイナス)を足したもので、輸出物価に比べて輸入物価が上がると、生産量が同じでもGDIは小さくなります。
日本は今、交易利得と交易損失のどちらですか。
交易損失です。内閣府の速報では実質の交易利得はマイナスが続いており、2026年4〜6月期は季節調整済み年率で−8.50兆円と、2025年10〜12月期の−5.75兆円から拡大しました。原油高で輸入デフレーターの上昇率(前年比15.2%)が輸出デフレーター(13.4%)を上回ったためです。
韓国のGDIはなぜ大きく伸びているのですか。
半導体を中心に輸出価格が輸入価格より大きく上がり、交易条件の変化による実質貿易損益が2025年7〜9月期の−10.9兆ウォンから2026年7〜9月期は+77.5兆ウォンに転じたためです(韓国銀行)。同期の実質GDPは3.4%増でしたが、実質GDIは18.8%増でした。日本の交易利得はマイナスのままで、向きが逆です。
7〜9月期の日本のGDIはいつ分かりますか。
内閣府の2026年7〜9月期1次速報は2026年11月16日8時50分、2次速報は12月8日に公表予定です。本稿の4〜6月期の数値もその際に改定される可能性があります。
出典
- 内閣府 統計表一覧(2026年4-6月期2次速報値、2026年9月8日公表) ↗
- 内閣府 実質原系列(前年同期比)CSV ↗
- 内閣府 実質季節調整系列(実額)CSV ↗
- 内閣府 雇用者報酬 四半期 CSV ↗
- 内閣府 2026年4-6月期GDP速報(2次速報値)ポイント解説 ↗
- 内閣府 国民経済計算 公表予定 ↗
- 日本銀行 企業物価指数(2026年9月速報) ↗
- 財務省 四半期別法人企業統計調査(2026年4-6月期) ↗
- 日本銀行 経済・物価情勢の展望(2026年4月) ↗
- 韓国銀行 経済統計システム ECOS(実質国内総所得・交易条件変化による実質貿易損益、200Y106) ↗
- 京郷新聞 韓国の2026年7〜9月期実質GDIと韓国銀行の見通し(2026年10月27日) ↗
- Focus Taiwan 台湾の2026年4〜6月期GDPと主計総処の見通し(2026年8月14日) ↗