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経常黒字なのに円安はなぜ? 2026年1〜7月は黒字20.4兆円、円は162円台

2026年1〜7月の経常黒字は20兆4,181億円で前年同期より21.4%増えましたが、円は7月に月平均162.55円まで下落しました。稼ぎの中身は第一次所得で、お金の多くは海外にとどまっています。財務省の国際収支統計で流れを追います。

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為替国際収支経常収支円安

2026年のニュースには「経常黒字が過去最大」と「円安が160円台」が並びました。稼いでいるのに通貨が弱いのはなぜか。財務省の国際収支統計で、黒字の中身と、お金がどこへ向かったかを確認します。

日本の経常黒字はどれくらい大きい?

2026年1〜7月の経常収支は20兆4,181億円の黒字で、2025年の同じ期間(16兆8,170億円)より21.4%多くなりました(財務省 国際収支の推移、1〜7月の合計と増加率は計算)。

+20兆4,181億円

2026年1〜7月の経常収支(財務省・日本銀行 国際収支統計、速報を含む。上半期と7月の合計を計算)

図で見る

日本の経常黒字はどれくらい大きい?

  1. 経常収支
    2025年(暦年)
    32兆2,350億円
    2025年1〜7月
    16兆8,170億円
    2026年1〜7月
    20兆4,181億円
  2. 貿易収支
    2025年(暦年)
    −5,677億円
    2025年1〜7月
    −1兆6,513億円
    2026年1〜7月
    +3,422億円
  3. 第一次所得収支
    2025年(暦年)
    41兆8,201億円
    2025年1〜7月
    24兆4,749億円
    2026年1〜7月
    24兆7,810億円
  4. 第二次所得収支
    2025年(暦年)
    −5兆5,743億円
    2025年1〜7月
    −3兆6,572億円
    2026年1〜7月
    −2兆3,700億円

下の表から一部の項目を抜粋しています。日付・単位・定義・注意点は元の表と本文を確認してください。

出典 ↓

項目2025年(暦年)2025年1〜7月2026年1〜7月
経常収支32兆2,350億円16兆8,170億円20兆4,181億円
貿易収支−5,677億円−1兆6,513億円+3,422億円
サービス収支−3兆4,431億円−2兆3,496億円−2兆3,352億円
第一次所得収支41兆8,201億円24兆4,749億円24兆7,810億円
第二次所得収支−5兆5,743億円−3兆6,572億円−2兆3,700億円

黒字の中身ははっきりしています。第一次所得収支(海外の子会社からの配当や再投資収益、海外の債券・株式からの利子・配当)だけで24兆7,810億円あり、経常黒字全体を上回ります。モノとサービスの取引(貿易・サービス収支)は1兆9,930億円の赤字です。数字の上では、日本の黒字はモノの輸出ではなく、海外に持つ資産からの収益で生まれています。

それでも円はどう動いた?

黒字が続いた月にも円安は進みました。財務省が公表する月中平均(東京市場中心値)で、円は1月の156.71円から7月の162.55円へ3.7%下落しました(7月の概要ほか各月の概要。変化率は計算)。

2026年経常収支円/ドル(月中平均)
1月9,365億円156.71円
2月3兆9,335億円155.07円
3月4兆7,754億円158.64円
4月3兆9,078億円159.28円
5月3兆9,683億円158.34円
6月−923億円160.71円
7月2兆9,889億円162.55円

2025年の平均は149.66円、2026年上半期の平均は158.24円でした。6月だけ経常収支が赤字なのは、第一次所得収支が3,801億円に縮んだためで、財務省は「証券投資収益」の赤字幅拡大を理由に挙げています(6月の概要)。

稼いだお金はどこへ行った?

答えは金融収支にあります。2026年1〜7月の金融収支は20兆2,519億円の純資産増で、経常黒字とほぼ同じ規模のお金が、海外資産を増やす方向に動きました。財務省の表示では、金融収支のプラスは「日本の対外純資産が増えた」、マイナスは「減った」を意味します。

2026年1〜7月金額(純額)何を意味するか
直接投資+14兆2,673億円日本企業の海外M&Aや増資引受け(対外18兆5,250億円)が、海外企業の対日投資(4兆2,576億円)を大きく上回った
その他投資+29兆5,253億円銀行などの海外向け貸付・預け金、貿易信用などで海外資産が増えた
居住者の海外株式・投資ファンド持分+1兆1,989億円投信を通じた買いと、他の投資家の売りがほぼ相殺
居住者の海外中長期債−3兆8,798億円海外債券は売り越し(日本にお金が戻る方向)
海外投資家の日本株式+9兆5,462億円(負債増)海外から日本株への買い越し(円買いの方向)
海外投資家の日本の中長期債+14兆6,706億円(負債増)海外から日本国債などへの買い越し(円買いの方向)
外貨準備−9兆5,205億円5月の円買い介入でドルを売った
金融収支(合計)+20兆2,519億円対外純資産が増えた

直接投資とその他投資は上半期の概要と7月の概要、証券投資の内訳は7月の付表3の月次値を合計しました。証券投資だけを見ると、海外投資家の日本買いが居住者の海外投資を上回り、円買いの方向でした。お金を海外に運んだのは、主に企業の直接投資と、銀行などのその他投資です。

なぜ第一次所得の黒字は円高につながらない?

稼ぎの一部は、最初から円に替わらない形で計上されるからです。2025年の第一次所得収支(速報)41兆5,903億円のうち、直接投資収益は26兆585億円で、その中の再投資収益は11兆3,425億円でした(財務省 2025年 付表1)。再投資収益は海外子会社の利益がそのまま現地に残る部分で、同じ額が金融収支の直接投資(収益の再投資)にも計上されます。為替市場で円を買う取引は発生しません。

日本経済新聞は2026年1〜6月について、「海外投資収益の国内への還流が鈍いほか、対日投資も低水準で『日本買い』が乏しい」と報じました。国際収支の数字もこの説明と矛盾しません。ただし、配当や利子のうちどれだけが実際に円に替えられたかは、国際収支統計からは分かりません。

デジタル赤字と原油はどう効いている?

サービス収支は赤字が続いています。2025年(速報)では、通信・コンピュータ・情報サービスが2兆4,740億円、その他業務サービスが5兆9,443億円、保険・年金サービスが3兆3,137億円の赤字で、旅行収支の6兆3,429億円の黒字を上回りました。2026年1〜7月の通信・コンピュータ・情報サービスは、各月速報の合計で1兆2,079億円の赤字で、前年同期の1兆4,527億円より縮小しています(計算)。

モノの取引では、7月に貿易収支が3,999億円の赤字になりました。財務省によると通関ベースの原粗油の輸入額は前年同月比+87.8%で、原油価格は円ベースで+78.0%でした。

新NISAの資金流出はどれくらい?

国際収支の投資家部門別の表では、「投資信託委託会社等」の海外株式・投資ファンド持分の買い越しが2025年に5兆9,574億円、2026年1〜7月は各月速報の合計で7兆6,929億円でした(2025年 付表3、計算)。新NISAを含む個人の投信購入はここに表れます。

ただし同じ期間に「信託銀行(信託勘定)」は海外株式を2025年に6兆7,636億円、2026年1〜7月に7兆9,100億円売り越しました(計算)。その結果、居住者全体の海外株式の買い越しは1〜7月で1兆1,989億円にとどまります。個人の投信の流れは大きいものの、国全体の証券投資の純額だけでは円安を説明できません。個人が米国株をどれだけ円で増やしたかは円安で米国株の円建てリターンは?で計算しています。

何が変わった? 次に見るべき数字は?

2026年は政府の為替介入が大きな出来事でした。財務省は4月30日、5月4日、5月6日の3日間で計11兆7,349億円の米ドル売り・日本円買いを実施し、5月の外貨準備は11兆4,354億円減りました。さらに7月30日〜8月26日の期間に15兆3,993億円の為替介入を公表しています。この期間の実施日と売買通貨の内訳は、11月2〜9日に公表される予定です。

円相場は、H.10の日次で7月29日の163.86円が2026年の最安値で、9月25日は157.18円でした(FRED DEXJPUS)。8月分の国際収支(速報)は10月8日に公表予定で、外貨準備の動きと、原油輸入の増加が貿易収支にどう出るかが確認できます。CapsWindowは為替相場の予想をしていません。外貨準備と短期対外債務の関係は外貨準備と短期債務で整理しています。

数字を読むときの注意 — 2026年4月以降の月次値は速報で、今後改訂されます。2025年の暦年合計は最新の推移表の値(経常収支32兆2,350億円)を使い、サービスや第一次所得の内訳は2月公表の速報(経常収支31兆8,799億円)の値のため、両者は一致しません。国際収支の貿易収支は所有権の移転ベースで、通関ベースの貿易統計とは異なります(7月の輸出は国際収支ベース11兆2,561億円、通関ベース11兆5,094億円)。1〜7月の誤差脱漏は4,635億円ですが、7月単月では−1兆2,077億円と大きく、項目の合計は完全には一致しません。月次の再投資収益は毎月ほぼ同じ額で計上されているため、この記事では2025年の年間値を使っています。円相場は財務省公表の東京市場中心値の月中平均で、米国株の記事で使うH.10(ニューヨーク正午)とは少しずれます。

過去の貨幣価値を計算する →

よくある質問

経常黒字なのになぜ円安になるのですか?

為替は経常収支だけでなく、外貨の出入り全体で決まるからです。2026年1〜7月の経常黒字は20兆4,181億円でしたが、日本企業の海外直接投資(純額14兆2,673億円)や銀行などのその他投資(29兆5,253億円の純資産増)で、ほぼ同じ規模のお金が海外資産に向かいました。黒字の中心である第一次所得も、再投資収益のように円に替えられない部分を含みます。

第一次所得収支の黒字は円に戻ってこないのですか?

一部は戻りますが、全部ではありません。2025年の第一次所得収支(速報)41兆5,903億円のうち、再投資収益11兆3,425億円は海外子会社の利益が現地にとどまる分で、為替取引を伴いません。日本経済新聞は2026年1〜6月について、海外投資収益の国内への還流が鈍いことを円安の理由の一つに挙げています。

新NISAの資金流出は円安の原因ですか?

統計では一つの要因として見えますが、単独では決まりません。国際収支で「投資信託委託会社等」の海外株式の買い越しは2025年に5兆9,574億円、2026年1〜7月は各月速報の合計で7兆6,929億円でした。一方、同じ期間に「信託銀行(信託勘定)」は海外株式を売り越しており、居住者全体の海外株式の買い越しは1〜7月で1兆1,989億円にとどまります。

デジタル赤字はどれくらいですか?

代表的な項目の通信・コンピュータ・情報サービス収支は、2025年(速報)に2兆4,740億円の赤字でした。2026年1〜7月は各月速報の合計で1兆2,079億円の赤字で、前年同期の1兆4,527億円より縮小しています。定義によってはコンサルティングや著作権使用料なども含めるため、報道の「デジタル赤字」とは金額が異なります。

為替介入は国際収支のどこに表れますか?

金融収支の外貨準備に表れます。財務省は2026年4月30日〜5月6日に計11兆7,349億円の円買い・ドル売り介入を実施し、5月の外貨準備は11兆4,354億円減少しました。7月30日〜8月26日には15兆3,993億円の為替介入が公表されており、8月分の国際収支は10月8日に公表予定です。

出典

  1. 財務省 — 国際収支の推移(令和8年7月中速報時点) ↗
  2. 財務省 — 令和8年7月中 国際収支状況(速報)の概要 ↗
  3. 財務省 — 令和8年上半期中 国際収支状況(速報)の概要 ↗
  4. 財務省 — 令和8年6月中 国際収支状況(速報)の概要 ↗
  5. 財務省 — 令和8年7月中 対外・対内証券投資(速報、付表3) ↗
  6. 財務省 — 令和7年中 国際収支状況(速報)総括表・付表1 ↗
  7. 財務省 — 令和7年中 対外・対内証券投資(速報、付表3) ↗
  8. 財務省 — 外国為替平衡操作の実施状況(2026年4月〜6月、日次) ↗
  9. 財務省 — 外国為替平衡操作の実施状況(2026年7月30日〜8月26日) ↗
  10. 財務省 — 国際収支状況 公表予定 ↗
  11. 日本経済新聞 — 経常黒字最大でも円安 1〜6月、マネー海外滞留で「日本買い」乏しく(2026年8月10日) ↗
  12. FRED — Japanese Yen to U.S. Dollar Spot Exchange Rate(DEXJPUS、H.10) ↗
  13. CapsWindow — データと算出方法 ↗

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