米国の物価上昇3.7%、日本は1.9% — 日本が米国を上回った15か月と、2026年に差が再び開いた理由
米国の9月消費者物価は前年同月比3.7%、日本は8月で1.9%です。2020年以降の78か月のうち15か月は日本が米国以上で、その大半は円安とコメ高の2024年8月〜2025年7月でした。2026年はガソリン暫定税率の廃止と補助金、コメ価格の反落で日本が再び下回っています。
米国の物価上昇率が9月に3.7%へ戻りました。日本は直近の8月で1.9%です。ただ、日本の方がずっと低かったわけではありません。2024年後半から2025年前半にかけて、日本の物価上昇率は米国を上回っていました。どの月に逆転し、なぜ2026年に再び差が開いたのかを、総務省と米国労働統計局の数字で整理します。
日米の物価上昇率は今どれだけ違うか
同じ2026年8月で比べると、日本の総合1.9%に対し米国は3.4%で、日本が1.5ポイント低い水準です。米国は9月に3.7%へ上がりました。
日本の消費者物価(総合)1.9% − 米国3.4%(いずれも2026年8月、前年同月比。計算)
日本は総務省統計局の8月分(9月18日公表)、米国は米国労働統計局の9月分(10月14日公表、8月は3.4%)です。日本の全国9月分は本稿執筆時点で公表されていません。先に出る東京都区部の9月中旬速報値は総合2.7%でした。
2026年の日本の総合は1月1.5%、2月1.3%、3月1.5%、4月1.4%、5月1.5%、6月1.6%、7月1.9%、8月1.9%と、2%を下回る推移が続いています。2025年8月から11月は2.7〜3.0%でした。
日本が米国を上回った15か月
2020年1月から2026年7月までの78か月のうち、日本の上昇率が米国以上だったのは15か月です。うち11か月は2024年8月〜2025年7月に集中しています。
日本が米国を上回った15か月
日本(年平均) / 米国(年平均)
ゼロを基準とする共通の線形目盛です。 下の表から一部の項目を抜粋しています。日付・単位・定義・注意点は元の表と本文を確認してください。
| 年 | 日本(年平均) | 米国(年平均) | 差(日本 − 米国) |
|---|---|---|---|
| 2020 | −0.02% | 1.25% | −1.27ポイント |
| 2021 | −0.24% | 4.68% | −4.92ポイント |
| 2022 | 2.51% | 8.00% | −5.49ポイント |
| 2023 | 3.26% | 4.15% | −0.89ポイント |
| 2024 | 2.75% | 2.95% | −0.20ポイント |
| 2025(11か月) | 3.23% | 2.69% | +0.54ポイント |
| 2026(1〜7月) | 1.52% | 3.26% | −1.74ポイント |
日本はe-Statの全国総合の接続指数(2025年=100)、米国はFREDのCPIAUCSLから前年同月比を計算し、各月を平均しました。米国の系列は季節調整済みで、2025年10月は値がないため2025年は11か月です。公表されている前年同月比と小数点以下でずれることがあります。
日本が米国以上だった月は、2020年5月、2023年6月・10月、2024年8月・9月・11月・12月、2025年1月〜7月、2025年11月です。差が最も大きかったのは2025年4月で、日本が約1.3ポイント上回りました(計算)。
この時期に重なっていたのは円安とコメです。ドル円の年平均は2022年の131.46円から2024年に151.46円まで円安が進み(FRED、計算)、輸入品の円建て価格を押し上げました。2025年の年平均では、総務省の公表で総合3.2%、穀類が21.9%上がり、うるち米(コシヒカリを除く)は67.2%の上昇でした。一方の米国は2024〜2025年に2%台後半まで落ち着いていました。
2026年に差が再び開いた理由
2026年は中東情勢で原油価格が上がった年ですが、日本ではエネルギーが前年割れになりました。米国は逆に大きく上がっています。
| 前年同月比 | 日本(2026年8月) | 米国(2026年9月) |
|---|---|---|
| 総合 | 1.9% | 3.7% |
| エネルギー | −0.7% | +20.4% |
| ガソリン | −2.6% | +34.2% |
| 電気代 | −2.4% | — |
| 日本:生鮮食品を除く食料/米国:食料 | +2.7% | +2.5% |
日本は総務省8月分、米国は米国労働統計局9月分です。基準月が1か月ずれている点に注意してください。
日本でガソリンが下がったのは政策によるものです。ガソリンの暫定税率は2025年12月31日に廃止され、2026年3月19日出荷分からは全国平均が170円程度を超える部分を国が補助しています(資源エネルギー庁)。10月13日のレギュラー全国平均は170.1円で、10月15日からの補助は1リットル43.0円でした。補助がなければ212.5円程度という資料もあります(資源エネルギー庁)。
総務省は8月分の資料で、ガソリン暫定税率の廃止と政策による効果がエネルギーを通じて総合を0.62ポイント押し下げたと試算しています(うちガソリン0.38、電気代0.17)。この試算をそのまま足し戻すと、8月の総合は2.5%前後になり、米国との差は1ポイント弱まで縮む計算です(単純な足し算で、政策がなかった場合の正確な物価ではありません)。
コメも反転しました。8月のコメ類は前年同月比−15.7%で、総合を0.16ポイント押し下げています。2025年に大きく上がった反動です。
生鮮食品とエネルギーを除くと
日本の「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」は8月に1.9%、米国の「食料及びエネルギーを除く総合」は8月2.4%、9月2.6%でした。同じ8月どうしの差は0.5ポイントで、総合の1.5ポイントよりかなり小さくなります。
日本でよく使われる「生鮮食品を除く総合」(いわゆるコアCPI)は1.7%で、総合より低い数字です。エネルギーが前年割れなので、エネルギーを含むほど数字が下がる構図になっています。米国はその反対で、エネルギーを含む総合(3.7%)が除いた指数(2.6%)より高い状態です。
日米の差の多くはエネルギーの扱いから来ており、それ以外の物価の上がり方は、総合の数字ほどは離れていません。なお、日本は生鮮食品だけを除き食料品は残すのに対し、米国は食料全体を除くため、厳密には同じ物差しではありません。
物価の差は、円で暮らす人に何を意味するか
日本の物価上昇率が米国より低くても、ドルで値段が決まるものを円で払うときの負担はむしろ大きく増えています。為替が重なるからです。
| 2019年12月 → 2026年7月 | 変化 |
|---|---|
| 日本の消費者物価(総合) | +13.7% |
| 米国の消費者物価 | +28.7% |
| ドル円(月平均) | 109.10円 → 162.33円(円は約33%安) |
| 100ドル分の買い物を円で払うと | 1万910円 → 2万889円(+91.5%) |
2019年12月に100ドルだった買い物は2026年7月に約128.68ドル。それぞれの月のドル円月平均(FRED)を掛けた計算です。日本の物価が13.7%上がる間に、ドル建ての支払いは円でほぼ2倍になりました。
「購買力平価」の考え方では、物価上昇率が低い国の通貨は長い目で見て上がりやすいとされます。この6年半は日本の物価上昇が米国の半分以下だったのに、円は大きく下がりました。購買力平価は長期の目安で、金利差や資金の流れの方が短中期の為替を大きく動かすことがあります。為替の行方を示すものとしては使えません。
物価を引いた政策金利でも見ておきます。日銀の政策金利1.25%程度(2026年9月18日決定)から8月の物価1.9%を引くと−0.65ポイント、FRBの誘導目標上限4.00%から9月の3.7%を引くと+0.30ポイントです。
過去の円の金額を今の価値に置き換えるときも、物価と為替のどちらを基準にするかで答えが変わります。
78か月の比較は、日本の全国総合指数(季節調整なし)と米国CPIAUCSL(季節調整済み)から計算した前年同月比で、米国の2025年10月は欠損のまま補っていません。公表されている前年同月比と小数点以下で異なることがあります。日本の全国9月分は執筆時点で未公表のため8月分を使い、米国の9月分とは基準月が異なります。日米の「コア」指数は除く品目が違います。総務省の政策効果は試算値で、足し戻した数字は政策がなかった場合の物価そのものではありません。本稿は物価、為替、金融政策の先行きを予想するものではありません。
よくある質問
日本の物価上昇率が米国を上回ったことはありますか。
あります。2020年1月〜2026年7月の78か月のうち15か月です(総務省と米国の指数から計算)。2020年5月、2023年6月・10月、2024年8月・9月・11月・12月、2025年1月〜7月、2025年11月で、最も差が大きかったのは2025年4月の約1.3ポイントです。2025年は年平均でも日本3.23%、米国2.69%でした。
2026年に日本の物価上昇率が米国を下回ったのはなぜですか。
主にエネルギーとコメです。ガソリンの暫定税率が2025年12月31日に廃止され、2026年3月からは全国平均を170円程度に抑える補助金が出ています。8月のガソリンは前年同月比−2.6%、エネルギー全体は−0.7%でした。米国は9月にガソリン+34.2%、エネルギー+20.4%です。コメ類は2025年に大きく上がった反動で8月は−15.7%でした。
9月の日本の消費者物価はいくつですか。
本稿執筆時点(2026年10月23日早朝)で全国の9月分は未公表です。直近の全国は8月分の総合1.9%です。先行して公表される東京都区部の9月中旬速報値は総合2.7%でした。全国9月分が公表されたら、表と本文を更新する必要があります。
日本の物価が低いなら、ドル建ての支出は割安になりますか。
そうとは限りません。2019年12月から2026年7月に米国の物価は28.7%上がり、ドル円の月平均は109.10円から162.33円になりました。100ドル分の買い物は円で約1万910円から約2万889円へ、約91.5%増えた計算です。同じ期間の日本の物価上昇は13.7%です。
出典
- 総務省統計局 2025年基準 消費者物価指数 全国 2026年8月分(2026年9月18日公表) ↗
- 総務省統計局 消費者物価指数 全国 最新の月次結果 ↗
- 総務省統計局 2020年基準 消費者物価指数 全国 2025年12月分及び2025年平均(2026年1月23日公表) ↗
- 総務省統計局 消費者物価指数 東京都区部 2026年9月中旬速報値 ↗
- e-Stat 消費者物価指数 全国(接続指数) ↗
- 米国労働統計局 Consumer Price Index(2026年9月) ↗
- FRED — CPIAUCSL 米国消費者物価指数(季節調整済み) ↗
- FRED — EXJPUS ドル円の月平均 ↗
- 資源エネルギー庁 燃料油価格定額引下げ措置 ↗
- 資源エネルギー庁 ガソリン価格と支給単価の推移(2026年10月) ↗
- 日本銀行 当面の金融政策運営について(2026年9月18日) ↗