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GPIFの運用実績は10年で物価に勝ったか — 年7.69%で100万円が約210万円、物価は1.15倍、M2は1.39倍

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2016〜2025年度の運用利回りは年率7.69%で、100万円に当てはめると約209万9,000円です。同じ期間の消費者物価は1.15倍、マネーストックM2は1.39倍でした。年度ごとに物価に負けた年、GPIFの利回りと自分の年金・確定拠出年金の利回りの違い、2026年度の速報までを、会計年度をそろえて確認します。

CapsWindow公開:
RetirementPensionsInflationM2Interest rates

公的年金の積立金を運用するGPIFは、毎年夏に運用実績を公表します。黒字か赤字かは大きく報じられますが、その間に物価やお金の量がどれだけ増えたかと並べて見る機会は多くありません。直近10年度の運用利回りを、同じ期間の消費者物価とマネーストックM2に並べ、自分の年金や確定拠出年金との違いも確認します。

10年でどれだけ増えたか

GPIFの資産全体の運用利回りは、2016年度から2025年度の10年間で年率7.69%でした。年度ごとの利回りをつなげると、100万円は約209万9,000円になります。

約209万9,000円

100万円をGPIFの2016〜2025年度の運用利回りで10年間つなげた場合(CapsWindow計算、2.0985倍)。年率7.69%はGPIF公表の「直近10年」の値と一致します。

利回りはGPIFの2025年度運用状況の収益率表の値です。GPIFの会計年度は4月から翌年3月までで、利回りは運用手数料などを差し引く前、2020年度以降は時間加重収益率です。同じ10年の収益額は151兆5,067億円、市場運用を始めた2001年度から2025年度までの累積は196兆9,306億円、年率4.67%でした(GPIF)。

2025年度は+16.47%、収益額は41兆3,995億円で、6年連続の黒字、過去2番目の大きさでした。年度末の運用資産は293兆6,437億円です(熊本日日新聞/共同通信)。資産別では国内株式+34.62%、外国株式+27.16%、外国債券+12.33%で、国内債券は金利上昇により−5.11%でした(ニューズウィーク日本版、GPIFの収益率表)。

物価には勝ったか

10年全体では勝っています。ただし、年度ごとに見ると物価上昇率を下回った年が3回ありました。

図で見る

物価には勝ったか

物価を差し引いた実質(計算)

  • 2016年度+5.92%
  • 2018年度+0.80%
  • 2020年度+25.55%
  • 2021年度+5.29%
  • 2023年度+19.12%
  • 2025年度+13.50%

ゼロを基準とする共通の線形目盛です。 負の値は左側に伸びます。 下の表から一部の項目を抜粋しています。日付・単位・定義・注意点は元の表と本文を確認してください。

出典 ↓

年度GPIF運用利回り消費者物価(年度平均の前年度比)物価を差し引いた実質(計算)
2016年度+5.86%−0.06%+5.92%
2017年度+6.90%+0.74%+6.11%
2018年度+1.52%+0.72%+0.80%
2019年度−5.20%+0.57%−5.74%
2020年度+25.15%−0.32%+25.55%
2021年度+5.42%+0.12%+5.29%
2022年度+1.50%+3.19%−1.64%
2023年度+22.67%+2.98%+19.12%
2024年度+0.71%+3.04%−2.26%
2025年度+16.47%+2.62%+13.50%

消費者物価はe-Statの全国総合指数(2025年=100)で、GPIFの会計年度に合わせて4月〜翌年3月の平均を前年度と比べました。実質は(1+利回り)÷(1+物価上昇率)−1で求めたCapsWindowの計算です。

2019年度は利回りそのものがマイナスで、2022年度と2024年度は利回りがプラスでも物価上昇率が3%台と高かった年です。物価が年0%前後だった2010年代後半と比べ、2022年度以降は同じ利回りでも実質で残る分が小さくなっています。

10年通しの比較では、2016年3月の87.5から2026年3月の100.6へ、消費者物価は1.1497倍でした。100万円の購買力を保つには約115万円が必要だった計算で、GPIFの約209万9,000円はそれを大きく上回ります。物価を差し引いた実質では1.8253倍、年6.20%です(CapsWindow計算)。

GPIF自身は、運用利回りから名目賃金上昇率を差し引いた「実質的な運用利回り」で年1.9%を目標にしています(GPIF)。報道によると、25年間の平均の実質的な運用利回りは4.33%で、目標を上回りました(ニューズウィーク日本版)。本稿の「実質」は消費者物価で割った値で、GPIFの定義とは違います。

お金の量(M2)と比べると

M2との比較でもGPIFが上回っています。同じ2016年3月から2026年3月に、マネーストックM2(日本銀行、平均残高・季節調整済み)は925兆7,464億円から1,285兆6,237億円へ1.3887倍になりました。

2016年3月の100万円が、2026年3月に金額(計算)倍率
GPIFの運用利回りで増えた場合(2016〜2025年度)約209万9,000円2.0985倍
M2と同じ割合で増えた場合約138万9,000円1.3887倍
物価と同じ割合で増えた場合約115万円1.1497倍

GPIFの倍率はM2の約1.51倍です(CapsWindow計算)。M2は平均残高の系列なので、3月の平均残高どうしを比べています。参考までに暦年(2015年12月→2025年12月)で比べると、消費者物価は1.1518倍、M2は1.3936倍で、結論は変わりません。

M2の増え方は、世の中のお金の量に対して自分の資産の比重が保たれたかを見る一つの基準で、物価とは別の問いです。どちらか一つを「本当のインフレ」とみなすものではありません。

自分の口座に入る利回りは別のもの

GPIFの利回りは、自分の年金の利回りではありません。GPIFは厚生年金と国民年金の積立金を運用する公的な基金で、加入者ごとの口座はありません。運用益は年金財政を支える財源の一つで、個人の利回りとして配分される仕組みではないため、GPIFが大きな黒字を出した年に自分の年金額がその分増えるわけではありません。

自分で運用先を選び、その結果が自分の口座に反映されるのは確定拠出年金です。企業年金連合会の実態調査では、企業型確定拠出年金の運用利回り(年率)の平均は次の通りでした(企業年金連合会、457社)。

企業型確定拠出年金の平均運用利回り今回調査前回調査
2024年4月〜2025年3月2.0%13.3%
制度導入以降4.7%6.9%

同じ2024年度のGPIFの利回りは0.71%でした。ただし、確定拠出年金は加入者ごとに商品の選び方も掛金を出した時期も違い、平均値は個人の結果を表しません。個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入者全体の平均利回りは、公的な統計として確認できなかったため扱っていません。

2026年度は今どうなっているか

2026年4〜6月期の運用利回りは+8.20%、収益額は24兆895億円で、6月末の運用資産は317兆7,596億円でした。市場運用開始以降の累積収益は221兆201億円、年率4.95%です(GPIF速報、最新の運用状況)。同じ期間(2026年3月→6月)の消費者物価は+0.99%、M2は+0.46%です(CapsWindow計算)。7〜9月期の速報は本稿の作成時点で確認できていません。

運用の土台となる基本ポートフォリオは、2025年4月1日から国内債券・外国債券・国内株式・外国株式を各25%とする配分で運用されています(GPIF)。

個人の側では、2025年6月13日に成立した年金制度改正法で、企業型確定拠出年金の拠出限度額が月5万5,000円から6万2,000円に引き上げられ、マッチング拠出の制限もなくなる予定(2026年4月1日)と報じられています。iDeCoの限度額引き上げと加入年齢の上限引き上げは、2027年分の掛金からを目標としています(マイナビニュース、厚生労働省の一次資料は未確認)。

30年積み立てると、差はどのくらいになるか

利回りの差は、長く積み立てるほど大きくなります。次の表は仮定の計算です。月2万3,000円を30年間(360回)、毎月末に積み立て、年利回りを一定とし、手数料・税金・賃金の上昇は考えていません。

仮定の年利回り積立元本30年後の残高(計算)元本に対する倍率物価年1.40%で今の価値に直すと(計算)
7.69%(GPIFの直近10年平均)828万円約3,059万円3.69倍約2,013万円
2%(比較用の仮定)828万円約1,130万円1.36倍約743万円

物価年1.40%は、2016年3月→2026年3月の消費者物価1.1497倍を年率にした値で、今後も続くという予想ではありません。GPIFの10年平均が今後30年続くという前提でもありません。GPIFの利回りは公的な基金のもので、個人がそのまま得られる利回りではない点にも注意が必要です。

自分の資産の伸びが物価やM2と比べてどうだったかは、計算機で確かめられます。

自分の資産の伸びを物価・M2と比べる →

GPIFの利回りは会計年度(4月〜翌年3月)の値で、運用手数料などを差し引く前です。本稿の消費者物価とM2は、年度ごとの比較では年度平均、10年の比較では2016年3月と2026年3月の値を使っており、基準の取り方で数字が少し変わります。GPIFは公的年金の積立金で、個人の口座ではありません。確定拠出年金の平均利回りは調査対象企業の平均で、商品・掛金の時期・手数料によって個人の結果は大きく異なります。30年の積立は仮定の計算です。過去の運用実績は将来の利回りを保証せず、本稿は特定の商品や制度への加入、売買を勧めるものではありません。

よくある質問

GPIFは10年間でどれくらい運用益を出しましたか。

2016年度から2025年度の10年間の運用利回りは年率7.69%、収益額は151兆5,067億円でした(GPIF公表)。市場運用を始めた2001年度から2025年度までの累積収益は196兆9,306億円、年率4.67%で、2026年6月末までの累積では221兆201億円です。

GPIFの運用は物価上昇に勝っていますか。

10年全体では勝っています。2016年3月から2026年3月に消費者物価は1.1497倍でしたが、GPIFの運用は2.0985倍で、物価を差し引いた実質では年6.20%です(CapsWindow計算)。ただし年度ごとでは、2019・2022・2024年度の3回、利回りが年度平均の物価上昇率を下回りました。

GPIFの利回りが高いと、自分の年金も増えますか。

直接は増えません。GPIFは厚生年金と国民年金の積立金を運用する公的な基金で、個人ごとの口座はありません。運用益は年金財政を支える財源の一つで、個人の利回りとして配分される仕組みではありません。自分で運用する企業型確定拠出年金の平均利回りは、2024年度が2.0%、制度導入以降が4.7%でした(企業年金連合会)。

2026年度に入ってからの運用はどうですか。

2026年4〜6月期の運用利回りは+8.20%、収益額は24兆895億円、6月末の運用資産は317兆7,596億円でした(GPIF速報)。同じ期間の消費者物価(3月→6月)は+0.99%、M2は+0.46%です(CapsWindow計算)。7〜9月期の速報は本稿の作成時点で確認できていません。

出典

  1. GPIF — 2025年度の運用状況 ↗
  2. GPIF — 2025年度の運用状況 収益率(Excel) ↗
  3. GPIF — 2025年度の運用状況 収益額(Excel) ↗
  4. GPIF — 2026年度第1四半期 運用状況(速報) ↗
  5. GPIF — 最新の運用状況 ↗
  6. GPIF — 基本ポートフォリオの考え方 ↗
  7. 熊本日日新聞(共同通信)— 公的年金、2025年度は41兆円の黒字(2026年7月3日) ↗
  8. ニューズウィーク日本版 — GPIFの2025年度運用実績(2026年7月3日) ↗
  9. 企業年金連合会 — 2024(令和6)年度 企業型確定拠出年金実態調査結果(概要版) ↗
  10. マイナビニュース — 年金制度改正法とDC・iDeCoの見直し(2025年10月29日) ↗
  11. 総務省統計局 — 消費者物価指数 長期時系列(全国・総合、e-Stat) ↗
  12. 日本銀行 — 時系列統計データ検索サイト(マネーストック M2 平均残高・季節調整済み) ↗

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