日米金利差と円相場 — 日本の10年金利は1986年以降一度も米国を上回っていない
2026年9月の日本の10年国債利回りは米国を200ベーシスポイント下回りました。1986年7月以降、日本が上回った月はありません。ドル円との関係は10年より2年の金利差の方が強く、2016年以降の相関係数は0.73ですが、2025〜2026年は金利差が縮んでも円安が進みました。
日本の長期金利が約30年ぶりの高さになっても、米国との差はまだ大きく開いています。ここでは「金利差が縮めば円高になる」という説明が、実際のデータでどこまで成り立つかを確かめます。
日本の10年金利は米国よりどれだけ低いか
2026年9月の月平均で200ベーシスポイント低くなっています。日本は財務省の国債金利の月平均、米国はFRED(GS10)の月平均です。
日本の10年国債利回り − 米国の10年国債利回り(2026年9月、月平均)。2.992% − 4.99%
| 時点 | 日本10年 | 米国10年 | 差(日本 − 米国) |
|---|---|---|---|
| 2025年6月(月平均) | 1.47% | 4.38% | −291bp |
| 2025年12月(月平均) | 1.980% | 4.14% | −216bp |
| 2026年8月(月平均) | 2.871% | 4.68% | −181bp |
| 2026年9月(月平均) | 2.992% | 4.99% | −200bp |
| 2026年10月7日(日次) | 3.111% | 5.28% | −217bp |
日次の米国は米国財務省の利回りカーブです。2025年後半から2026年夏までは日本の上昇が速く、差は縮んでいました。9月は米国の上昇が上回り、再び開いています。
一度も上回らなかった40年
1986年7月から2026年8月までの482か月、日本の10年物は毎月米国を下回りました。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 日本が下回った月 | 482か月中482か月 |
| 差が最も大きかった月 | 2000年1月(−495bp) |
| 差が最も小さかった月 | 2020年7月(−59bp) |
| この期間のドル円の平均 | 117.14円 |
| 2年物で日本が米国を上回った月 | 1990年9月、1991年5月・8月・11月・12月の5か月 |
10年物では一度もない逆転が、2年物ではバブル末期に5か月だけありました。日本の短期金利が急上昇した時期です。差が最も縮んだ2020年7月は、米国が新型コロナ対応で金利を急低下させた時期でした。
金利差はドル円をどこまで説明するか
最近10年ほどは一定の結び付きがありますが、40年全体では弱い関係です。符号は「米国 − 日本」の金利差で、プラスの相関は「差が開くほど円安」を意味します。
金利差はドル円をどこまで説明するか
1986年7月〜2026年8月
ゼロを基準とする共通の線形目盛です。 下の表から一部の項目を抜粋しています。日付・単位・定義・注意点は元の表と本文を確認してください。
| 組み合わせ(月次) | 1986年7月〜2026年8月 | 2016年1月〜2026年8月 |
|---|---|---|
| 10年金利差の水準 × ドル円 | 0.29 | 0.58 |
| 2年金利差の水準 × ドル円 | 0.30 | 0.73 |
| 10年金利差の12か月変化 × ドル円の12か月変化率 | 0.11 | 0.53 |
| 2年金利差の12か月変化 × ドル円の12か月変化率 | 0.03 | 0.58 |
ドル円はFRED(EXJPUS)の月平均、米国2年はGS2です。2016年以降は2年金利差の方が10年より強く連動しています。2年物は政策金利の見通しを映し、短期の資金の動きに近いためと考えられます。ただし全期間の0.3前後という値は、金利差だけで円相場を語れないことも示しています。
2026年はどう動いたか
| 月 | 10年差(日本 − 米国) | 2年差(米国 − 日本) | ドル円(月平均) |
|---|---|---|---|
| 2025年6月 | −291bp | 314bp | 144.48円 |
| 2025年12月 | −216bp | 242bp | 155.92円 |
| 2026年1月 | −201bp | 233bp | 156.65円 |
| 2026年2月 | −193bp | 220bp | 155.10円 |
| 2026年4月 | −190bp | 242bp | 159.12円 |
| 2026年6月 | −182bp | 270bp | 160.77円 |
| 2026年7月 | −183bp | 277bp | 162.33円 |
| 2026年8月 | −181bp | 256bp | 158.85円 |
| 2026年9月 | −200bp | 278bp | — |
2025年6月から2026年7月まで、10年差は108ベーシスポイント、2年差は37ベーシスポイント縮みました。それでもドル円は144.48円から162.33円へ、12.4%円安になっています(計算)。教科書どおりなら円高に向かう組み合わせで、逆の結果でした。9月のドル円月平均はまだデータに入っていません。
金利差以外に円を動かしたもの
いくつかの要因が同じ時期に重なっています。どれがどれだけ効いたかを切り分けた統計はありません。
| 要因 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 為替介入 | 4月30日〜5月6日に11兆7,349億円、7月30日〜8月26日に15兆3,993億円、計約27.13兆円の円買い | 財務省 |
| 貿易赤字 | 2026年8月は1兆1,056億円の赤字で4か月連続 | 財務省 貿易統計 |
| 原油高 | 2月28日のイラン戦争開始後、ブレント原油先物は4月30日に一時1バレル126ドル台 | 報道ベース |
| 国内からの海外投資 | 投資信託委託会社等の外国株式等の取得超が2026年1〜9月に約9.97兆円 | 別稿「円キャリートレード」参照 |
介入が入った週には円が大きく戻しています。ドル円は7月29日の163.86円から8月3日の156.96円へ、9月1日の160.03円から9月9日の153.50円へ、それぞれ1週間ほどで4%程度動きました(FRED日次)。金利差がゆっくり動く一方で、円相場はこうした出来事で段差のように動きます。
円と米国の基準で比べる — 同じ金額でも、円で見るか米ドルで見るかで結果が変わります。期間を入れて確かめられます。
金利差が再び効く条件と、この数字の限界
日米の2年金利差は日次で2026年1月5日の2.27ポイントから10月6日の2.86ポイントへ広がっています。日本銀行の次の会合(10月29日〜30日)と米国の利上げ・利下げの組み合わせで差が大きく動けば、2016年以降のような連動が再び目立つ可能性があります。逆に介入や貿易収支、資金流出の方が大きければ、金利差は脇役にとどまります。
相関係数は月平均どうしの並びを要約したもので、金利差が円相場を動かしたという因果関係を示すものではありません。日本の金利は財務省の日次値をCapsWindowが月平均した値、米国はFREDの月平均で、日次・月末で比べると値が変わります。2016年以降の値は128か月の標本です。ドル円の月平均は2026年8月までで、9月の比較はできません。原油価格は報道ベースの値です。
よくある質問
日本の10年国債利回りが米国を上回ったことはありますか。
1986年7月から2026年8月までの月平均では一度もありません。差が最も小さかったのは2020年7月の−59ベーシスポイント、最も大きかったのは2000年1月の−495ベーシスポイントです。2年物では、バブル末期の1990年9月と1991年の4か月の計5か月だけ日本が米国を上回りました。
日米金利差が縮めば円高になりますか。
2016年以降は金利差が縮む時期に円高になる傾向がありました(2年金利差とドル円の相関係数0.73)。しかし2025年6月から2026年7月は、2年金利差が314から277ベーシスポイントに縮んだのにドル円は144.48円から162.33円へ円安が進みました。金利差以外の要因が大きかったことを示しています。
なぜ10年より2年の金利差を見るのですか。
2年物は今後2年間の政策金利の見通しを強く反映し、短期の資金の動きに近いためです。2016年以降のドル円との相関係数は2年金利差が0.73、10年金利差が0.58でした。ただし全期間ではどちらも0.3前後で、時期によって関係は大きく変わります。
2026年の為替介入はいくらですか。
財務省の公表で、4月30日〜5月6日に11兆7,349億円、7月30日〜8月26日に15兆3,993億円、合計約27.13兆円の円買い・ドル売り介入が行われました。
出典
- 財務省 国債金利情報(日次値、月平均はCapsWindow計算) ↗
- FRED — 10-Year Treasury Constant Maturity Rate(GS10、月平均) ↗
- FRED — 2-Year Treasury Constant Maturity Rate(GS2、月平均) ↗
- FRED — Japanese Yen to U.S. Dollar Spot Exchange Rate(EXJPUS、月平均) ↗
- FRED — Japanese Yen to U.S. Dollar Spot Exchange Rate(DEXJPUS、日次) ↗
- 米国財務省 デイリー国債利回りカーブ ↗
- 財務省 外国為替平衡操作の実施状況 ↗
- 財務省 令和8年8月分貿易統計(速報)の概要 ↗
- CapsWindow — データと算出方法 ↗